嫁聴け

A.O.R.

MOONRIDERS (1992)

人間が枯れる状態とは。年を重ね、風貌が、老いを漂わせる皺を増やしてゆくことだろうか。気に属する力が枯渇することだろうか。どのような形であれ 「衰える」 部分が多い以上、いつまでも若いままの力を持ち続けることはありえない。そしてそれと反比例するように黒い味は増して行く。

50 代の持つそれが確実に 20 代のそれを上回るもの。経験。風貌が枯れるに従って表面に現れてくるこの味は、凄みという強力な武器を伴なって周囲の人間をなぎ倒して行く。それは無視されることを拒もうとする化石。

過去の追憶、流行。同時に歩み、置き去りにして行く 「時代」 。幻想として抱いていた夢は現実の中でより一層、欲に縛られたファンタジーになる。技術に取り残されて行く者が陰で操るテクノロジー。洗練されて行くように見えるメカニカルな工程の中で、そこから染み出した脂は確実に機械の働きを邪魔し、自分達の存在をさりげなく主張して行く。

化石の作りだす音楽は現代と言う音をまとい、そして詞で本性を現わす。松やに、黒く汚れた機械油。現在に絡みつき自らの呪縛とする過去を浄化しようとする欲。その姿は、これから自らが辿る時間の先見である。