嫁聴け

ピアノ協奏曲第1番嬰ヘ短調Op.1

ラフマニノフ

私は夜にありたい。夜は私を裏切らない。夜は必ず絶望をもたらす。絶望という言葉の中にある断ち切れなさ、煮えきらなさへと割り掘り進むには夜という時間は短すぎる。その永く続くことを欲する集中への対価があまりにも少なすぎる。朝さえ訪れなければ夜はいつまでも続く。拙い絶望への憧れと甘えをどこまでも許し包んでくれる。その時間に抱かれ続けることを望み、その一方で陽射しから逃れることで得られる自在なる時間をこの部屋へと呼び込むその昼を求めようとあがき続けている。

夜と昼が閉じられることを望む。繭の中には何もおらず、その外側から透かして見るこの目がとらえる絶望的なまでに長い夜。夜であり続ける限り私は許しを得ることができる。私以外の全てから逃れることを是として存在を許してもらえる。私は夜に甘えたい。夜に好かれることで私を認めてくれるというのであれば、私は夜に私というものを捧げることを厭わないだろう。しかしいかなる小道具を取りそろえようとも、夜は私に甘えることを許してはくれない。夜は必ず朝をもたらす。絶望の否に希望は位置しない。夜の否に朝は位置しない。私は常に夜の中に潜み、そこから光を見通そうとしている。しかし夜を求める私が許されていないからこその朝が訪れる。夜よ、いつまでも夜を。朝をかなぐり捨てることで求められるその答えに踏み出すこともできず、ただ夜に祈りを捧げることだけで朝を遙か先へと引き延ばそうとしている私の浅はかさを夜は見逃すことはない。全知全能である夜。私はここにいる。その空の下に私を晒す。その一部にしてはくれまいか。私を。この小さな欲望を。